■05
「てめぇウゼェんだよ!」
「1年のクセに調子乗りやがって!!」 ...屋上庭園のドアを開けたら、そこでは喧嘩が繰り広げられてました。 とりあえず状況把握の為に対象を観察してみる。 青いネクタイを締めた男子生徒、つまりアタシの同級生たちが4人。 一方、相手側の男子はネクタイを締めていない。...と思ったら、ベルトに赤いネクタイが付いていた。という事は1年生だ。 どうやら喧嘩というよりは一方的なリンチのようで。これは放っておくわけにはいかない。 といっても、男子4人の中に女の自分が1人割り込んだところで勝ち目はない気がする。が、割り込むしか方法がない訳で。 仕方なしに、喧嘩が繰り広げられている方へ近づく。 「アンタ達何やってんの!? 下級生相手にさぁ?」 そう声をかけると、男子達は一斉にこっちを向いた。 「あぁ、テメェ誰だよ!? 女だからって容赦しねぇぞ!!」 「来るんなら勝手に来れば?」 そう言えば、一番手前にいた男子が殴りかかってくる。 パンチが入ってくる前に踏み込んで右ストレートを腹に一発。更に、怯んだ隙を突いてそのままアッパーを繰り出す。 「っっ...」 「悪いけど、アタシこう見えて昔空手やってたから。並大抵の奴に負ける気はないわよ。」 「てめ、覚えてろよ!!」 ハッタリのつもりで言ってみたものの、意外にも男子達は引いてしまった。どうやら数に任せていただけで、1人1人はそこまで強くないらしい。 「大丈夫?」 同級生達が出て行ったのを確認した後、倒れていた1年生の子に声をかけてみる。 「...誰も、助けろ、なんて、言って、ねぇよ...!」 「んー、アタシも助けるなんて言ってないからね。ただ、ここで喧嘩されると邪魔だから倒しただけ。君を助けたのはついでよ、ついで。」 あくまで強気な彼にそう言い返すと、黙り込んでしまった。 と、同時に音を立てて屋上庭園の扉が開かれる。 「哉太っ! ...それと、先輩!?」 入ってきたのは月子ちゃんと、金髪青目の男の子。 「月子、それに錫也...。」 「月子ちゃん、彼、知り合い?」 「はい、幼馴染なんです。」 とりあえずこのメンバーの中で唯一面識がある月子ちゃんに訊いてみる。と、彼女は一言そう答えて、哉太君?の手当を始める。。 「俺は東月錫也です。それから、そこにいるのが七海哉太。月子と同じ天文科1年です。」 その後、錫也君が追加で自己紹介してくれた。 「アタシは星座科2年の。よろしくね。」 そう言って笑いかければ、錫也君も笑顔を返してくれた。 「あ、絆創膏持ってるけど、よかったら使う?」 そう言って月子ちゃんに差し出すと、彼女は笑顔で受け取る。どうやら消毒液やガーゼなんかは用意してたみたいだけど、絆創膏は持ってきてなかったみたい。 「で、哉太君、大丈夫なの?」 「別に、これくらい...」 「駄目だよ哉太、無理しないでっ! ただでさえ体弱いんだから...」 相変わらず強がってる哉太君と、心配そうに話しかける月子ちゃん。てか、体弱いって言ってたけど本当に大丈夫なのかな? 「哉太、小さい頃から病気で...。本当は3分しか動けないんだけど...。」 そう説明してくれる月子ちゃんの声は悲しげで。哉太君のことが大切だってことが伝わってくる。 「そっか。」 さっきの喧嘩と言い喋り方と言い、哉太君は無駄に強がってる気がする。周りに心配かけたくないが為に強がって見るけど、結果として余計に心配をかけてるところは、何となく自分と似てる気がした。それに、3分という時間制限があることも。 「じゃ、アタシは帰るから。あんまり喧嘩しない方が良いよ、哉太君。きっと後悔することになるから。」 そう言いながら3人に手を振って、アタシは屋上庭園を後にした。 |