■01

小さい頃から、星を見ることが好きだった。
その理由はいくつかある。
天文学者である両親の影響もその一つだし、歳の離れた兄が好きだったってこともある。
小学校に入学した日に、妹とそれから隣の家に住む一つ年下の幼馴染と一緒に兄に天体観測へ連れて行って貰ったことは今でも鮮明に覚えている。
それから6年後。両親の仕事の都合で、小学校を卒業すると同時にアメリカへ引っ越すこととなった。
仲の良かった友達や幼馴染に泣く泣く別れを告げて向かった異国の地。
最初の1ヶ月は英語をロクに話すことができなくて、ものすごく苦労した。
どうにか日常会話に困らない程度まで英語が上達した後は学校に通い始め、何人か友達を作りやっぱり星を見ていた。
アメリカでの生活を初めてから4年。
やっと慣れ始めたと思った矢先に、今度は日本へ戻ることとなる。
しかも、今回は家族と一緒ではなく自分1人で。
久しぶりの日本は酷く懐かしくて、でも少し不安を感じる。つい4年前まで暮らしていた自分の祖国だというのに。
そして、この5月という非常に中途半端な時期に、高校に転入することになる。
選んだのは私立星月学園。
星に関する知識を専門的に学習する全寮制の学校。
山奥にあることとか、元男子校である影響なのか女子生徒が1人しかいないこととかは気にしない。
それよりも、日本でも星について学べることが嬉しかった。
アメリカの学校でも、星について学んでいたから。それを日本でも続けたいと思っていて。
でも、日本にはそういった類の専門学校はないと思っていたから、半ば諦めかけていた。
そんな中で、幼馴染の兄がこの学園の存在を教えてくれたのだ。
どうせ両親も兄妹もまだ海外にいるのだから、全寮制でも気にしない。
むしろ家だと1人だけど寮だったら人がたくさんいる訳だから、好都合なくらいだ。
そして、今日は引越しの日。
大きな荷物は業者に頼んで運んでもらっているから、自分で持っているのは必要なものだけを入れた旅行用のトランク1つ。
空港からそのままバスに乗って、移動し続けること約1時間。そろそろ着く頃かと思い、そっと窓の外へ目を向けてみた。
次第に建物が少なくなっていき、それと同時に乗客も一人、また一人と減っていく。
結局今乗っているのは自分1人。
暫くすると、巨大な建物が目に入ってきた。そして、バスはどんどんと減速していく。
やがてバスは完全に止まった。どうやら学園に到着したようだ。
バスから降りると、すぐそこに大きな校門。その奥にある校舎だってすごく立派で、ここが山奥の田舎だってことすら忘れてしまいそうだ。
でも、振り返ればそこには沢山の木があるだけ。バスがいなくなった後は車の一台もいない。
ここが、星月学園が、自分の新しい場所。
もう後ろには振り向かない。ただ前だけを向いて、進んでいかなければならないのだから。
自分は変われる。いや、変わらなきゃいけない。このままではいけないのだ。
だから再び前を向いて、校門にそっと手をかけた。



(ここで彼に再び会うことを、この時のアタシはまだ知らない。)

*―*―*―*―* *―*―*―*―* *―*―*―*―*

主人公独白チックな第1話
感覚としては1話というよりプロローグチックな感じ。
とりあえず名前変換が出てこないのはごめんなさい。
でも独白で名前変換は無理な気が...←
以下ネタばれなので伏せときます。
ラスト3行とサブタイ下の()内の文章はそのうち意味分かるようになります。
ぶっちゃけて言えば只の伏線です。
この文は主人公の過去と関係があったりするんですよ。
ちなみに、途中で出てくる幼馴染=龍クンのことですw
という訳で主人公に星月学園のことを教えてくれた人ってのは宮地兄のことです♪