■PROLOGUE-01
暗く深い、闇の中。
何も見えなくて、何も聴こえなくて。自分の姿さえ分からない。 それでも、自分の元に何かが集まってくることは解る。それは―――小さな小さな、光の粒の様なものだった。 『ディセンダー、我らが救世主よ。彼の者とこの世界ルミナシアに、幸多からんことを―――――』 どこからともなく声が聞こえてくる。外部からと言うよりは、自分の中に直接響いているような感覚だ。 その声を聴きながら、覚醒しきった筈の意識が、再びフェードアウトし始めた......。
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目を開ければ、正面に桃色の髪と碧色の瞳を持つ少女がいた。どうやらアタシは、意識を失っていた様だ。 周りを見渡すと、そこにあるのは岩と少しの木々、そして青い空。それらから判断するに、現在位置は高い所、恐らく山の山頂かそれに準ずる場所の筈だ。 「気が付いて良かった。空から降りて来たんだもん。すっごく驚いたよ! あれは、何かの魔術なの?」 "魔術"と訊かれても、自分がその様なものを使ったのか、はたまた使えるのかすら分からない。それ以前に、自分が何故ここにいるのかも分からないのだ。 「覚えてないの? あなた、空から降りて来たのよ。」 とりあえず首を傾げ曖昧に誤魔化せば、少女は再び驚き目を見開いた。 「...アタシが空から降りて来たって、本当なの?」 「そう。光に包まれて、空からフワフワ降りて来たんだよ。 ともかく、気が付いて良かった。まるで眠ってしまった様な状態だったもの。ここは魔物が多くて危険だから...。」 少女はそう言って、安堵と憂いが入り混じった溜息を吐く。 眠ったような状態だったという事は、余程長い時間気を失っていたのだろうか? 「私はカノンノ。カノンノ・グラスバレー。あなたは?」 「...、よ。・。って呼んで頂戴。」 彼女に名を尋ねられ、脳内に浮かんだ自分のものであろう名前を口にした。刹那、何とも言えない感覚に襲われる。同時に、酷く懐かしい様な気がして。まるで、幾多の時を越え久しぶりにこの名を呼んでもらえたかのような、そんな気がした。 「...。いい名前ね。」 少女...否、カノンノはそう言って微笑んだ。 「とりあえず、ここは危険だから山を降りましょう。」 その声に続いてアタシも立ち上がる。そして、途中で立ち寄った光の幾何学場についての説明を聞いたり、橋に仕掛けられたギミックの解除の仕方を教えてもらったりしながら、順調に山道を下って行く。 が、道が細くなり始めた辺りで、何か生物の様な物と出くわした。 「あっちゃあ...、魔物だ。通してくれそうにないなぁ。」 魔物という事は、倒すなり追い払うなりしないとここを通れないという事だ。アタシは、いつの間にか抱き抱えていた槍を、強く握り締めなおした。 この槍をいつから手にしていたのかは分からない。恐らく、気を失う前からずっと手にしていたのだろう。表面は綺麗に磨かれているが、余程使い込まれているのか所々塗装が剥がれ、小さな傷もたくさん付いている。どうやら、それなりに年季の入った物の様だ。アタシは槍を鞘から引き抜き、カノンノの方を向く。 「カノンノ、アタシも戦うわ。どうせこのままじゃ通れないのでしょうし。」 「そうみたいだね...。倒さないと、先には進めなさそう。」 ......えっ、も手伝ってくれるって? うん、じゃあ、一緒に戦おう! じゃあ、行くよ! カノンノも、いつの間にかその手に大剣を携えていて。アタシ達は、再び目の前の魔物と対峙した。 相手側の数は三匹。それに対してこちら側はカノンノとアタシの二人だけだ。しかし、数では劣っていても、よく視ればそこまで手強い魔物ではないようで。これくらいなら、2人でもどうにかなりそうだ。 槍を握る手に再び力を込める。そして――― 「瞬迅槍っ!」 一気に敵の懐へ走り込み、槍を突き付ける。と、危害を加えられていることに気付いたのか、魔物たちは一斉にアタシの方へ寄ってきた。 「、そのままオタオタ達を引き付けておいて。私が術で片付けるわ!」 「分かったわ。奴等の弱点は炎よ。火属性の術を使って!」 カノンノの声を聞きながら、それでも視点はしっかりと魔物に合わせる。と同時に、左目に全神経を集中させれば、敵の能力や弱点、得意属性等のステータスが視えてくる。これは便利な能力だ。 「落葉っ!」 「...来たれ爆炎、焼き尽くせ!バーンストライク!!」 彼女の詠唱が終わるのを見計らい、一気に後方へ移動する。その瞬間、上方から火炎弾が飛んできて、魔物達の真上に落ちて爆発を起こす。魔物達は三匹とも巻き込まれ、一気に倒れた。 「、大丈夫だった?」 「えぇ、何てことないわ。」 得物を再び鞘の中に収め、カノンノの方に振り向く。彼女の方も怪我等は一切していないようだ。 「あ、そろそろ船が到着する時間だ。急いで山を降りなきゃ! 少し急ぐことになるけど、良いかな?」 「構わないわよ。あなたのペースに合わせるわ。」 "船"、という単語に違和感を覚えつつも、とりあえず彼女の質問には肯定した。そして、先程よりも少し早いペースで進んで行く。 「船に乗ったら、あなたの希望する場所へ送ってもらえるように伝えるから。」 途中で言われたその一言に、思わず足を止めてしまっていた。 希望する場所と言われても、自分が何故ここにいるのか、一体どこから来てどこへ向かっていたのか、その全てが思い出せない。 否、それだけではないのだ。いくら記憶の糸を辿ろうとしたところで、この山で目を開き、カノンノと出会う以前の記憶が、己の名以外ごっそりと抜け落ちたかのように思い出せないのだ。 「希望する、場所...?」 「そう。どこかへ行こうとしていたんでしょう? それで、ここへ降りてしまったとか...。」 回らなくなった思考の中、カノンノの声がどこか遠い所から聞こえてくる。 「...悪いけど、何も思い出せないみたいなの。自分が、どこから何の為にここへ来たのか、そしてこれからどこへ向かおうとしていたのか。 ...ううん、それだけじゃないわ。自分の名前以外、あなたと出会う前の事は何も思い出せないわ。」 返答に困ったので、正直に今の自分の状況を告げれば、カノンノの瞳は三回目の驚きを示した。 「え......。えぇっ!? 自分の名前以外、何も分からないって......。 んーんんん...。それじゃあ、どうすればいいかな。 彼女は唸りながら、目を閉じて必死に考えている。そして、暫くしてから再び目を開くと、 「とりあえず、船までおいでよ。それから一緒に考えるから。」 そう言ってニコリと微笑んだ。 再び出た"船"という単語にやっぱり疑念を抱きつつも、彼女に同行することにした。このまま魔物がいるこの地にいるのは危険だし、この土地の地理が分からない以上は下手に動くこともできないからだ。 「行こっ!」 彼女に手を引かれ、アタシは再び歩き始めた。
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という訳ではじめてしまいましたマイソロ3夢
落ちとか構成とかはまだ全て未定です。多分恐ろしく長くなりそう←ェ ストーリーの流れは限りなく原作沿いなつもりです。でもオリジナル要素も満載でお送りしますw そして先に言っておきますが、プロローグ今回長めです。 普段は1話で終わらせていますが、今回はアドリビトムに正式加入するとこまでがプロローグなので。 まだ全て打ち込んでないので細かいことは分かりませんが、ルーズリーフ5枚分あります← ちなみにこの1話でルーズリーフ1枚と4分の1です。 ということでプロローグだけで3、4話使うと思います;; 打ち込む時にかなり修正している部分もあるので何とも言えませんが...。 修正と言えば、最初カノンノはファイアボール使ってましたw 普通に使えると思って使わせていたのですが、まさかのまさかで使えない、だと...!? ぇ、ちょ、イアハートは使えたのにぃっ!! ↑て言いながらバーンストライクに変えました。 初期は使えないんじゃないの? 等のツッコミはなしの方向でお願いします← とまぁこんな感じにスローペースに進んでいく連載ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!! ではまた2話でノシ |